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1980年代、不均一系における流体挙動の理論的理解は大きく進展しました。 特に、壁や毛細管、スリットによって抑制される流体の相転移に大きな注目が集まりました。 1987年2月にTarazona、MarconiおよびEvans(1)が発表した論文「Phase Equilibria of Fluid Interfaces and Confined Fluids–Non-local Versus Local Density Functions(流体界面および密閉流体の相平衡 – 非局所密度汎関数と局所密度汎関数)」は、後に吸着等温線への密度汎関数理論の適用手法の確立において重要な役割を果たしました。
1989年、Seaton、WaltonおよびQuirke(2)は、密度汎関数理論に基づく平均場計算によって作成された等温線モデルを使用して、窒素吸脱着等温線から細孔径分布を測定できるという実践的な手法を初めて提唱しました。 しかし、この手法では、特定の分布関数を推測する必要がありました。
Micromeritics Instrument Corporationの研究者たちは、分布形状の推測がもたらす問題点を明らかにしました。 吸着等温線を測定するための一般的な手法としてDFTを普及させるためには、分布モデルの推測や仮定を排除する必要があると考えました。
James P. Olivierは、William B. Conklin(3)の支援のもと、吸着分子が侵入可能なあらゆる細孔径の大きさに対応した、材料の細孔径分布の測定手法の開発に成功しました。この手法では、細孔径分布の関数形式を推測する必要はありませんでした。 DFTに基づいて計算された、細孔形状に依存する等温線モデルセットを用いて、吸着等温線データの数値デコンボリューションを行うことで、DFTの普及を実現しました。これらのモデルは、それぞれ独自の狭い範囲の細孔径を再現しており、これらをセットとして使用することで、幅広い細孔径に対応できます。
この成功により、Micromeriticsは1991年、物理吸着等温線から気孔率データを取得するための一般的な方法としてDFTを採用し、その測定データを提示した世界初の商業分析装置メーカーとなりました。 フランスのコンピエーニュで開催された第7回International Conference on Surface and Colloid Science(コロイド・界面科学国際会議)において、OlivierとConklinは「Characterization of Porous Solids from Physical Adsorption Data Using Theory of Constrained States(制約条件の理論を用いた物理吸着データに基づく多孔質固体の特性評価)」と題したプレゼンテーションを行いました。 彼らが発表した手法では、表面近傍および細孔範囲内での相転移について、密度勾配理論に基づく改良された平均場計算を用いて、吸着等温線をモデル化しました。
吸着等温線へのDFTの適用手法の確立において、Seatonらが開発した最初の手法と、OlivierとConklinが提唱した手法はどちらも、推測した吸着等温線の計算に単純な局所密度近似(LDA)を使用していました。 Lastoskie、GubbinsおよびQuirke(4、5)は、LDA手法の未熟な点を指摘し、Tarazonaが提唱した改良版である平滑化密度近似(SDA)を用いて、Seatonらの手法をさらに発展させました。 1993年に発表されたこの論文を契機に、非局所密度近似への関心が高まるようになりました。
OlivierとConklin(6)は、SDAに基づいた手法の研究も行いました。1992年にポーランドのカジミエシュ・ドルニで開催された国際シンポジウムでは、固体の吸着および触媒作用における表面不均一性の影響に関する論文 「Determination of Pore Size Distribution from Density Functional Theoretic Models of Adsorption and Condensation within Porous Solids(多孔質固体における吸着および縮合の密度汎関数理論モデルを用いた細孔径分布測定)」を発表しました。
さらに、翌1993年に開催されたCOPS III会議において、Olivier、ConklinおよびSzombathely(7)は、「Determination of Pore Size Distribution from Density Functional Theory: A Comparison of Nitrogen and Argon Results(密度汎関数理論を用いた細孔径分布測定:窒素およびアルゴンの測定結果の比較)」と題した論文を発表しました。 この研究では、非負最小二乗法(NNLS)と非負制約付き正則化を用いたモデルと試験データのデコンボリューションによって細孔分布曲線を導き出し、それをもとに表面積と細孔容積の分布を説明しました。
この時期から、DFTは物理吸着等温線から信頼性の高いデータを取得するための重要な手法として認識され始めるようになります。 1993年、Micromeriticsは、物理吸着分析装置であるASAP 2000シリーズとデータ整理パッケージ「DFT Version 1.00」を発表し、メソポア領域のマクロ細孔に関する高解像度データを収集する装置の提供を開始しました。 DFT Version 1.00の取り扱い説明書の序文ページ(コピー)は、本記事の末尾に添付されています。
これらの先駆的な研究が発表されて以来、Micromeriticsは15年以上にわたって、DFTのモデルと適用法のさらなる開発に貢献し続けています。 2008年、DFTの発展に貢献した第一人者の1人であるJacek Jagielloが入社したことで、DFT分野における当社の優位性は一層高まりました。 Micromeriticsは今後も、吸着等温線データの取得手法としてのDFTの活用について、利便性の高い、実用的かつ有効な適用法の開発に尽力していきます。
参考文献
1) Phase equilibria of fluid interfaces and confined fluids–Non-local versus local density functionals; Tarazona, Marconi, and Evans; Molecular Physics, Volume 60, Issue 3 February 1987, pp. 573 – 595
2) A New Analysis Method for the Determination of the Pore Size Distribution of Porous Carbons from Nitrogen Adsorption Measurements; Seaton, Walton, and Quirke; Carbon, Vol. 27, No. 6, pp. 853-861, 1989
3) Characterization of Porous Solids from Physical Adsorption Data Using Theory of Constrained States; Olivier and Conklin; Presented at 7th International Conference on Surface and Colloid Science, Compiegne, France, 1991
4) Pore Size Distribution Analysis of Microporous Carbons: A Density Functional Theory Approach; Lastoskie, Gubbins, and Quirke; J. Phys. Chem. 1993, 97, 4786-4796
5) Pore Size Heterogeneity and the Carbon Slit Pore: A Density Functional Theory Model; Lastoskie, Gubbins, and Quirke; Langmuir 1993,9, pp. 2693-2702
6) Determination of Pore Size Distribution from Density Functional Theoretic Models of Adsorption and Condensation within Porous Solids; Olivier and Conklin; Presented at the International Symposium on the Effects of Surface Heterogeneity in Adsorption and Catalysis on Solids; Kazimier Dolny, Poland, July 1992.
7) Determination of Pore Size Distribution from Density Functional Theory: A Comparison of Nitrogen and Argon Results. In Characterization of Porous Solids; Olivier, Conklin, and Szombathely; Proceedings of the IUPAC Symposium (COPS III); Elsevier Press: Marselle, France, 1993.
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