一貫した孔径解析のための複数のガス吸着等温線の利用

2021年11月3日

概要

長年にわたり、多孔質材料の表面積と細孔径分布(PSD)の特性評価は、沸点(77 K)で測定された窒素(N2)の吸着等温線の分析が主流であった。N2は入手が容易で高価ではなく、実験室で日常的に使用されているため、今後も固体表面の特性評価に最も使用される吸着剤であろう。

多孔質材料のテクスチャーを特徴付ける最新のアプローチは、密度汎関数理論(DFT)やモンテカルロ・シミュレーションなどの分子モデルを用いることに基づいている。分子間相互作用ポテンシャルは、PSD計算のモデル開発に不可欠である。不活性ガスの吸着は、細孔幅のような固体形状に最も敏感であり、表面の化学サイトとの特定の相互作用には敏感ではないため、不活性ガスに基づくモデルは細孔径の特性評価に最適である。したがって、極性表面サイトと相互作用し、吸着等温線に影響を及ぼす可能性のある強い四重極モーメントを持つN2 よりも、Ar の方が優れている。表面特性評価にN2よりもArを使用することを好むことは、IUPACテクニカルレポート(2015)によって公式に推奨されている。

二酸化炭素(CO2)は、マイクロポーラス・カーボンの特性評価によく使われるもう一つのガスで、N2よりもさらに高い四重極モーメントを示す。最近の研究では、N2とCO2を、四重極モーメントがはるかに小さいO2とH2ガスに置き換えた。PSD計算は、古典および量子補正二次元非局所密度汎関数法(2D-NLDFT)に基づく分子モデルを用いて行った。われわれは、いくつかの代表的な炭素試料上で77Kで測定したO2とN2、及び87Kで測定したArの吸着等温線から得られたPSDの結果が定量的に一致することを示した。これらのガスは、PSD計算のための個別のプローブとして使用することもできるし、対応するカーネルと組み合わせて、与えられたサンプル上で同時に測定された対応する等温線に適合させることもできる。このような吸着データの包括的な解析により、 単一の等温線から得られる結果よりも頑健な結果が得られる。一貫した PSD の結果を提供するモデルによるさらなる利点は、 同じ試料で測定された他の等温線から、 一方の等温線を予測できる可能性があることである。

スピーカー

ヤチェク・ジャギエロ

ヤチェク・ジャギエロ

シニア・サイエンティスト

ポーランド、クラクフのヤギェウォ大学で量子化学を専攻し、化学修士号を取得。1984年、ポーランドのルブリンにあるM.キュリー・スクロドフスカ大学で化学博士号を取得し、W.ルジンスキー教授の指導の下、不均一表面における物理吸着の熱力学を研究。

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